失業による多重債務の社会保障の課題

政策に目を転じると、失業保険の存在が失業率を高めたりあるいは失業期間を長期化しているかもしれないといういわゆるモラルハザードの問題がある。これら の問題についてわが国ではどのように評価したらよいか。

 

失業者生活保障についてであるが、表7.1から国際比較してわかることは、第一に、すべての視点(給付額、給付期間、家族形態)を考慮に入れて総合的に判断するとOECD諸国の中でわが国の失業保険制度の手厚さは最低である。第二に、給付期間一年目の置き換え比率は30%であり、OECD諸国全体での位置づけからすれば、わが国は、むしろ低いといったほうがよい。第三に、保険給付期間に注目すると、わが国は二年目や三年目の給付がゼロであることに特色がある。わが国では、失業が二年目になると、まったく支給がない。ただし、わが国において訓練期間中は延長給付が最大で300日もあるので、最長で600日という解釈も可能である。特に失業率が高くなってきた現今では訓練期間中の給付の意義は大きい。

 

以上のことから、わが国はOECD諸国のような先進国と比較すれば、失業保険制度の手厚さは最下位のグループに属しているといえる。この原因は、給付期間の短さに依存するところが大きい。このような失業保険制度の不十分さは、やはり、加入率の低さからくるものであろう。たとえば、雇用者について言えば、一週間に20時間以上働く、年収90万円以上、一年以上の雇用契約の存在が条件になっている。この条件だと、多くのパートタイム労働者や契約労働者が排除される。中小企業の中には保険料を負担しない場合もある。公務員も加入していない。これらの要因が失業保険制度の意義を弱くしている。

 

ただ、失業保険制度が手厚い国では、負の経済効果をもたらすとの考え方もある。失業保険の存在が失業率を上げたり、あるいは失業期間を長期化していると、1980年代のヨーロッパとアメリカの経験から言われるようになった。失業保険の存在によって失業期間中に所得保障があれば、企業は解雇(レイオフ)しやすくなるし、労働者も容易に利殖しやすくなるというのがその背景である。これが先ほど述べたモラルハザードの問題である。

 

わが国においては、このような負の効果(モラルハザード)は発生していない。それには、以下の理由があげられる。第一に、失業保険制度が手厚くない。第二に失業者のうち、失業保険給付を受けている人は半数にも満たない。よって、当然ながら、失業保険が失業に与える効果には限度がある。

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