多重債務者へのセーフティネットの意義と課題

多重債務者へのセーフティネットの意義は3つ考えられる。まず、多重債務が発生したときの被害を最小にする。第2に、多重債務が生じたときの補償を行う制度をあらかじめ用意しておく。第3に、セーフティネットの存在によって安心感が得られることによる効果を期待する。

 

こうした政策を実現していく過程に乗り超えるべき問題が存在する。ひとつは、セーフティネットの準備には手間がかかるし、給付に対する負担を誰がどのような形で行うのかといったこと。そして、セーフティネットを悪用しようという人が必ず存在していることだ。たとえば、セーフティネットの存在によって、求職を簡単にしない、職に簡単につかないといったことがある。これはモラルハザードというようなやっかいな問題へと発展する可能性もある。

 

セーフティネットを論じるときに重要な視点を提供するのが、ナショナルミニマムの概念である。国民一人一人が生きていくために、社会保障制度のレベルが最低限どの程度あるべきか、あるいは、どの程度提供できるのかが問題となる。

 

近代の社会保障政策の立案における古典となりつつあるベヴァリッジ報告〔1942、1944〕においても、ナショナルミニマムは重要な概念となっていった。それは、ある最低限の生活水準以下にいる人たちに対して、政府がどれだけの所得移転を行えばよいかが社会保障制度の原点だったのである。先進国の社会保障制度は、このナショナルミニマムを全国民に保障するにはどのような政策が可能かをめぐって、制度改革が論じられてきたといってよい。

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